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 SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を組み合わせたシステムを構築する要はデータ連係だ。円滑なデータ連係のためには、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開するSaaSを選ぶとともに、データを連係するためのツールiPaaS(インテグレーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス)が役に立つ。

 複数のSaaSへのアクセスを一元管理するためのシングルサインオンも重要な要素だ。IDaaS(IDentity as a Service)などのID管理システムを通じてIDを管理した上で、ユーザーIDを基にアクセスを制御する。米Microsoft(マイクロソフト)の「Azure Active Directory(AD)」や米Okta(オクタ)が提供するサービスがIDaaSの代表例だ。シングルサインオンや多要素認証の機能、IDにひも付いたアクセス権限の管理自動化機能を持つ。

iPaaSの例
サービス名開発企業名サービス概要
Anyflow EmbedAnyflowSaaS事業者向けのAPI連係支援サービス。SaaSベンダーが外部サービスとAPI連係をする場合に必要な開発を容易にする
ASTERIA WarpアステリアSaaSやオンプレミスのシステムなどをAPI連係を介して接続。ノーコードでワークフローを構築
Intelligent Data Management Cloudインフォマティカクラウドサービスやオンプレミスなど環境を問わず、データを統合。基盤には、データカタログやAPI開発、マスターデータ管理、データの管理・監視などの機能がある
Magic xpi Cloud GatewayMagic Software EnterprisesSaaSやオンプレミスのシステムなど様々なシステムをノーコードで接続。大量のデータの処理に向く。オンプレミス版のソフト「Magic xpi Integration Platform」も提供
Anypoint PlatformセールスフォースAPIを開発。APIの管理、監視機能、SaaSやオンプレミスのシステムなど様々なITシステム同士を相互接続できる機能がある
ZapierザピアーSaaSを組み合わせたワークフローをノーコードで構築・自動化。5000以上のサービスと連係
IDaaSの例
サービス名開発企業名サービス概要
Azure Active Directoryマイクロソフトシングルサインオンや多要素認証の機能、IDにひも付いたアクセス権限の管理自動化機能を持つ
OktaOktaシングルサインオンや多要素認証の機能、IDにひも付いたアクセス権限の管理自動化機能を持つ

多様なiPaaS、SaaS間連係をノーコードで

 iPaaSとはSaaSや業務システム間をつなぐことができるソフトを指す。原則としてプログラミングをすることなく、Webブラウザーの画面上でアプリやクラウドサービスを選んだり、パラメーターを設定したりするだけで連係作業は済む。オンプレミスで動くソフトウエア製品に加えて、最近はiPaaS自体もSaaS形式で提供するベンダーが増えている。

 SaaS間のデータをつなぐ目的は主に3つだ。異なるSaaSを組み合わせて1つのシステムのようにワークフローを組むこと、社員のIDや商品番号などのマスターデータをシステム間で共有すること、SaaSから出力される生データにETL(抽出・変換・ロード)処理を施し、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールなどにつないで分析できることである。

 ツールが強みとする点はそれぞれ異なる。国内ベンダーの製品の代表例が、アステリアが開発・提供する「ASTERIA Warp」だ。9879社が導入(2022年12月)し、データソースとして連係できるSaaSやパッケージソフトの数は100種類以上という。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)の「Amazon RDS」「Amazon DynamoDB」「Amazon Redshift」「Amazon S3」などのクラウドサービス、米Google(グーグル)の「Gmail」や「Googleカレンダー」といったWebアプリ、その他にも労務管理SaaSの「SmartHR」やクラウド型の名刺管理サービス「Sansan」など国内の主要なSaaSと標準で接続できる。国内SaaSとの接続が多い点が同社の差異化点の1つだ。

 SaaS同士をつなぐ作業は原則としてノーコードだ。接続対象のシステムを表すアイコンをドラッグ&ドロップし、接続先のシステムに入力するデータと出力するデータの項目を結びつける。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上で操作できるわけだ。